離婚前提策略婚。【改訂版】
百歩、いや一億歩譲って、あいつといて幸せそうな顔をしてたら少しは俺の気も済んだ。

ところがどっこい、なんだあの顔。

幸せの「し」の字も見当たらない。誕生日だっていうのに不満だらけの仏頂面。


誕生日にあいつといるってことは、仲良くやってるってことじゃねぇのかよ。

俺を見ても動揺なんかしないで、微笑むくらいの余裕はねぇのかよ。


─また俺の中は華乃で染まっていく。


考える時間が減ってきたからいい感じに忘れられると思ったのに、またぶり返す。

厄介な病気だな、このやろう。


「…お前、禁欲でもしてんのか?」

「は?」


ベッドに横になっていると、ソファーに座り携帯をいじっていた奏が、いきなり不躾な問いかけをしてきた。


「お前にしては珍しく女を連れてこねぇから」

「…別に禁欲してるわけじゃねぇけど、なんか興味がなくなった」

「お前…。まさかゲイとか言うなよ」

「ぶっ!やめろボケ!あほか!」

「俺を狙ってんなら諦めな。俺は今可愛い女に夢中なんだ。男の相手はしてられない」
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