裏切りの真紅~戦乙女と紅番外編~
乙女は魔槍を握ったまま、俺の部屋を出て行く。

槍の扱いは慣れていないのだろうか。

入り口のところで槍がつっかえて手間取ったりもしていたが。

「おい、どこへ持っていく気だ」

「王宮用達の鍛冶だ。手入れをしてもらう」

やっと入り口を通り抜け、俺に振り返る乙女。

「戦もなくなったのだ、今なら問題あるまい」

大有りだ。

「槍使いが槍も無しでは格好がつくまい」

「ならば」

乙女は廊下の壁際に手を伸ばし。

「これを持っているといい」

長尺の得物を俺に差し出した。

「……」

溜息混じりにそれを受け取る。

成程、準備がいい訳だ。

はじめから魔槍を俺から奪うつもりだったらしい。

「何、ほんの一日かそこらだ。すぐに貴方の手元に戻る」

そう言って乙女は、魔槍を両手で握り締めて立ち去っていく。

小柄な乙女が槍を持っていると、槍の寸法がおかしいのではないかと錯覚してしまう。

それにしても。

「懐かしいものを持ち出してきたな」

俺は渡された『それ』を眺める。


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