裏切りの真紅~戦乙女と紅番外編~
指揮官の寝返り。

もっとも、俺にしてみれば元々こういう作戦だったのだが…。

精鋭部隊にとっては突然の叛旗だった事だろう。

ましてやたった一人で、しかもこの場で刃を向けられるなどと誰も思いはしまい。

それこそが、戦慣れした精鋭兵達の隙を生んだ。

前衛の槍兵の次は剣を持った騎士達。

「こ、このっ!」

動揺は隠し切れないものの、敵が来れば即座に反撃に移る。

「成程、よく鍛えられている」

感心しながらも。

「!?」

騎士達の横薙ぎ、振り下ろし、袈裟斬りの間隙を縫い、槍の穂先が走る。

甲冑の隙間…関節を切りつけ、腱を、動脈を、時には手足そのものを切断する。

全て殺す必要はない。

行動不能にさえすれば、小国に攻め入る事さえできなくすれば事は足りる。

最小の動きで最大の効果を。

単独で挑んだのにはそんな理由もある。

数が多ければ勝てるというものではない。

乙女の前で言った事とはまるで逆の事だがな…。

内心自嘲しつつ。

「ぐはっ!」

石突を地面につき、体を宙に浮かせて精鋭兵の胸板に横蹴りを入れる!

蹴りの勢いで吹っ飛んだ兵士は、他の兵を巻き込んで将棋倒しになった。

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