裏切りの真紅~戦乙女と紅番外編~
完全に脅えた声だった。

恐怖に思わず漏れた悲鳴と言ってもいい。

しかしその声に紛れて。

「ぐっ!?」

数本の矢が俺の肩に、背中に刺さった。

…苦痛に顔を歪めつつ、振り返る。

「ひ、ひぃいぃぃぃっ!」

俺と目が合った弓兵達が、更に脅えた声を上げた。

狙おうと考えて、殺そうと思って放った矢ではない。

恐怖のあまり、思わず指から離れた矢だったのだろう。

だが、戦場で最も恐ろしいのは、このような『殺気なき一撃』なのだ。

流石の俺も、動きが止まる。

そこへ。

「い、今だ、かかれぇっ!」

矢の命中で勢いづいたのか、精鋭兵達は突撃して来た。

「ちぃっ…!」

槍の払いでその攻撃を捌くも。

「っ!!」

背後にまで気が回らなかった。

二度、三度、背中を斬りつけられる!

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