嘘に焙り焙られる
「二人が丸く収まれば、もう悩むこともないのにな。」とぼそぼそ田所さんは、話し出した。

「その選択肢は、とうの昔に消えていましたよ。」と素っ気なく直矢は言う。

「まさか、直矢が実力行使にでてくるとは、御見それ致しました。」

「恭兵が桐子に気があるのは薄々気付いていましたが、あれほど信念あるとは思ってませんでした。」

「一切たじろぎもせず、淡々とペン走らせていたからなあ…ついにこの時が来たか。」感慨深げな田所さん。


男二人でうんうんと話し続ける。


「二人ともちょっと待ってよ。私の意思は、無視なの?私、恭兵に特別な感情持ってないよ」

((そこが一番の大問題なんだよなあ。))やれやれというポーズで話は打ち切られた。



明らかに好意を剥き出しにされたとき、私はどう対処をするのが正しいのか。

今まで、好印象カップルというイメージが世間に定着してからというもの、まともに寄ってくる男性はいなかったに等しい。

このイレギュラーをどう切り抜けよう。




田所さんが、マグカップのブラックコーヒーを一気に飲み干し、こう言った。

関係解消も視野にうまく報告いれておくとのこと。

こじれにこじれる前に、連絡は絶対に入れること。

ルームシェアの解約タイミングは、事務所と用相談になるだろうから、いつでもいいよう片付けを始めておくこと。

「次の部屋も心配ない程度には、こちらで何件か準備しておきます。

最後に水村恭兵に気を付けろ、二人ともゴシップに撮らせるな撮られるな以上。

本日は解散。」




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