嘘に焙り焙られる
なんて呑気にペタペタとスリッパを引きずりながら、クローゼットの仕分け作業を開始する。
今季はもう絶対着ない夏物の淡い色のワンピースから、丁寧にダンボールへ閉まっていく。
奇妙な状態でも安住という意味を少しだけ知りえることができた家。
1LDKのセーフハウス。
都心にしては自然の森が映えるが、高層の窓から眺めるビルの隙間から見える夕焼け色は、絶品だ。
こたつ一式とカーペットを端に寄せ、無垢のフローリングを掃除機で撫でながら考えることは、事務所が多大な消せない十字架を付けてしまったけれど、なんだかんだ自分自身が守られて生活してしまったことだ。
これは後悔でも反省でもなく、前を向くしか選択肢がなかったということでもある。
ずっと宙ぶらりんな未完成な日々が続くよりも、ここらできっぱりと別々の道を歩くことが必要なのは、お互いに分かっていたつもりだ。