嘘に焙り焙られる
「カット」監督の声が早朝の空に響く。
「チェック入りまーす。」
シーンを一同で見返す。
治しもなく一発OKだった。
「いい演技だったよ。」と監督から褒められ
「いえいえ、ありがとうございます。」と口では言えても、屈辱感でいっぱいだ。
15秒のシーンだとしても、あれは、演技ではない。
直矢に演技をさせられたと言っても過言ではない。
何なの直矢のあの指の動き。
確実にこの前の恭兵との一悶着を観察されてたってことでしょう。
同様を悟られないよう、鉄の仮面を張り付けたような笑顔の表情でやり過ごす。
「あとは幸せなカップルの回想シーンのみだから、よろしくね。」
「はい、よろしくお願いします。」