嘘に焙り焙られる
つい、そばに転がる恭兵の顔をまじまじと観察する。
眠る顔は、普段見慣れないからか新鮮だった。
俳優さんだけあって整った顔しているんだなと思う半面、シルバーのネックレスが視界に入る。
恭兵の顔のそばにある空き瓶と空のペットボトルを回収しようと手を伸ばす。
そんな手を静止するように、私の右手がパッと前触れなく掴まれた。
こんな展開は考えてないだけに迂闊千万。
「おはよ。」といきなり手首を掴まれたまま、か細い声での挨拶。
完全に気配を消していたつもりだったのに、逆に気配を消していたのは恭兵の方だったのだろうか。
「おはよー。いつから起きていたの?」と小声のまま動揺をみせず素直に返す。
「内緒。とーこは、何してんの?」
クルッとこちらを向いてくる恭兵、一瞬男を魅せられた気がした。
冷たい目のような仏頂面の顔の裏には、何が待っているのだろう。
「ご…」
「ご?」
思わずその表情に尻込みをした。
言葉が躓くと共に、じわりと近づく距離にドギマギしてしまう。
至近距離で端正な顔のまま、じっと覗きこむ恭兵に耐えられない。