嘘に焙り焙られる
「オールアップです。お疲れ様でした。」ハウススタジオにスタッフの声が響く。

「二人ともお似合いだし、今日は最高のものが撮れたよ。」

「ありがとうございます。」

「流石期待の俳優no.1に選ばれるだけある。結婚式は是非呼んで」と監督から言われた。

「いやいや、期待しないで下さい」

「またまたー」

と軽い雑談としっかりとした挨拶を監督らと交わし、その場を後にした。




今日は、流されてばかりだ。自己嫌悪に陥る。

「もう演技自信ないかも」田所さんに楽屋で愚痴をこぼすと、

「桐子は、思った通り表情を出せば敵無し!大丈夫!」と励ましてくれる。

「田所さん…」と口を思わず噤む、納得がいかず落ち着かない。

「言いたいことは最後まで言いなさい」

「私、悔しい。」唇を噛み締めギュッと目をつぶる。

飛び道具を出された上に、直矢の演出に抗うことができなかったからだ。

シーンの手の弄びようから言って、恭兵との諸事情をほとんど見られていたこともわかる。

流石にそこまでは、田所さんに相談できない。

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