嘘に焙り焙られる
田所さんにフランクに言われてはみるモノの、直矢に直接聴きたいことばかりだ。
演技を引き出された。
恭兵の諸事情が関わっているだろうことは、私にしかわからない。
この相談は田所さんには、話せない。話せないよ。
孤軍奮闘の思考回路が、田所サンに簡単に見透かされていたとして、この感情は墓場まで持っていく感情の一つだ。
それから平穏無事に二人して自宅に送り届けられた。
「直矢、あの今日の…」
「言わんとすることはわかる。時間が取れるの明後日くらいかな。お疲れ様ー」
直矢は着替えをさっと済ませ本居さんと足早に次の現場へ消えていった。
時間が取れたと思っていても、売れっ子の直矢に時間はない。
誰にも拘束されない時間を私には待つしかない。
待つしかないのだ。
足早に去る背中を何事もないよう見送る。
全然違う人に見えた演技中の直矢は、もうすっかりいなかった。