嘘に焙り焙られる
心の中がぐちゃぐちゃだ。

直矢はずるい。

私が強く断れないことも知ってるくせに、最期まで誘いかけ揺さぶりをかけてくる。

惑わすことを本当にやめて欲しい。

これから直矢の真っ直ぐな目を直視することもなくなるのだろう。

哀しくなるだけだからと目線を外し本音を隠す。



「打ち合わせ行ってくる。飯はイラナイ。先に寝てなさい。」


直矢はまるで業務連絡のように言葉を放ち、温情を残し去っていった。

お互いビジネスだとか偽装だとか表向きはどうとでも言えるだろう。

私達にぴったりな呼び名なんてあるのか考えるけど、一層のことエゴエゴのエゴだ。

身体の関係なんてないのにエゴだけしか、残ってない。

友情や愛情ともはっきり言えないだろう。

お互い踏み込み過ぎな干渉はやめておこう。

とは言ったものの、土足で踏み込んで気付くとそこにいた存在だった気がする。

のらりくらりとした関係性だった。

同情や憐れみと表現した方が似合うのかも知れない。

お互いがお互いのペットのような、可愛いのか可哀想なのか、複雑な情だった。

夕飯いらないって言われてるのに、いつの間にか野菜スープを多めに作っていた。

習慣ってまずいなあ。

目の腫れが残らないようパックを貼り付け桐子は、就寝をお迎えする。

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