嘘に焙り焙られる
気付くと頭を撫でる感触で目が覚める。

すっかりキリッとした空気感の朝だ。

「おはよう、よく寝れた?」なんて何の気なしの言葉を発する直矢がいた。

その手を傷付けないよう払いながら、

「おはよう。添い寝だけのはずでしょ。なんで髪の毛を撫でてるの。」

「いい匂いでつい。なあ。添い寝って浮気に入るのかな?」

「私が彼女の立場ならおそらくキレてる。」

「だよなあ。」とベットに突っ伏して直矢は珍しく項垂れていた。

鼻筋がスッと通る直矢が、朝の光に映えていた。

完全に拒絶できなかった私も悪いから、そんな顔で謝らないでよ。


「それも今日で卒業!ほら起きよ。」と気合いを込めて布団を剥がしかける。

「本当俺たち順序をすっ飛ばした関係過ぎて、」自重気味に直矢はそんなことを言う。

「あと10分。最期のお願い」と手を拝む仕草の直矢が、柔らかく笑っていた。

身体の関係はないくせに、一通りの愛をささやこうとするから始末が悪い。

それに加えて断り切れない自分が憎い。

顔が良いって常々、罪深い。

渋々、寝具に身を寄せる。




< 33 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop