嘘に焙り焙られる
「恭兵くんて、どういう人なのかな?」

「真っ直ぐでいい奴。竹を割ったような感じ。やっと恋でも始める気になった?」

直矢に髪の毛をかきあげられ、うなじを親指で確認するように撫でられる。

「まだ、わからないかなあ」と桐子は首をふり伏し目がちに顔をベットに沈めはぐらかす。

「恭兵に桐子を撫で回してる所見られたらサクッと刺される自信ある。」

「それはお互いさま」

私もいつ直矢の彼女さんに刺されるかわからない。

執拗に髪を撫でられている時間が虚しくなる。

気付かれないよう無地のシーツをぎゅっと握り潰す。

「むしろそんなにそこの傷跡目立つ?」と聞き返すと直矢の手がやっと止まる。

桐子には右後頭部の生え際に小指の爪ほどの傷の凹みがある。

「近くで触るかじっと観察しないとわからない。これ知ってる奴が増えそうだから俺のジェラシー?」ジトーとした企みがありそな直矢の目でまくし立てられる。

「もう一部のカメラマンさんとか、ヘアメイクさん達にはとっくに知られてるよ。うなじショットの時は、うまく髪の角度や指でさらっと隠せる構図にしてくれるからプロ過ぎて尊敬してる。」

しれっとした顔で桐子は言い返す。




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