嘘に焙り焙られる
と言うかさっき直矢はジェラシーって言ってた?気のせい?

おもちゃ取られそうになる子どもか?

考えるだけ無駄かもしれない。

常人の思考では到底わからない関係性ということはわかるよ。

世間上は恋人、実態はくされ縁の赤の他人。

ただしルームシェアな上、添い寝はなぜかする。

肌を撫でるのは、なし崩し的にあり。

キスはないセフレでもない。

世間の間では、彼氏彼女の間柄で認知され。

実質、事務所に外堀を埋められている。

1年は続いたシェア生活も、もう直ぐ終わることは確定済み。

幸せってどういうことを指すのかな。

仕事も楽しいけど死活問題で思考停止の上に目の前の生活に必死だった。



「俺の気持ちはさ、もう全部作品に置いてきた。」

聞きたかったことってこれでしょう。

なんでもお見通しのように直矢は意地悪く微笑む。

「卒業おめでとう」

戒めのように放たれた言葉が桐子の胸を抉っていく。

返答する間も与えず朝食の準備へと直矢は、サクサク動き出した。

と言っても、昨日の残りの野菜スープを温めるだけの簡単な朝食なんだけども。
< 35 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop