嘘に焙り焙られる
着信音が鳴る。

当たり前というか田所さんからの電話なのだけど。

画面の通話に触れる。

「明日エスティの服ブランド展示会の後、部屋の契約と引越し終わらせられそう?」

田所さんは、いつもと変わらない朗らかなトーンで会話を進める。

「展示会は午前10時集合ですよね。だいたいの荷物は、まとめられましたよ。物件の方は簡単に空きあるんですか?」

矢継ぎ早に返答を返し、桐子は業務連絡を終わらせたかった。

「事務所の子会社の不動産だから事務所を辞めない限り、融通が効くって言ってなかったか。」

ああ、また私が選べる範囲は少ないのか。

期待なんてほぼないに等しいし?

ショックは最小限に抑え込まれてるけど、味気ない相槌が伝わったのか

「リクエストは多少聞くよ」と譲歩を田所さんは見せてくる。

「キングサイズのベッド置いても困らないくらい広いことと、日当たりがいい角部屋かな」

「伝えておく。他には?」と田所さんは求めるけど、ゴシップ誌の商品としてはいつまで消費されるかなんて聞く勇気がない。

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