嘘に焙り焙られる
「そうそう、直矢から田所さん用のプレゼント預かったので明日渡すね。」

「そう。わるいね。あとは?」電話越しの田所さんから、何気ない気遣いが漏れている。


「お仕事増やして欲しいです。」

業務連絡のはずなのに、長電話を許してくれる。

「ぬかりなく営業しておく。それから?」

「...これからのいつ来るかわからない炎上が恐いです。」つい愚痴っぽく桐子は、吐露してしまった。

「そうだな...。泣きたいときは、泣いていいよ。後始末はこっちでなんとかする。」田所さんは、優しい声で返答をする。

余計に桐子の琴線に触れる。

状況にゆさぶられる。

いつから、こんな涙脆くなってしまったのだろうか。

受話器を持つ手がカタカタと小さく震えていた。

隠そう隠そうとすればするほど、嗚咽が漏れそうになる。

「桐子は強いフリした子だから、目はちゃんとケアな」

やはり、田所さんにはバレている。

「大丈夫?そっち行こうか?」

「いえ、大丈夫です。失礼します。」

入念にフェイスケアとスキンケアとヘアケアをすると、

香水を束ねた箱に見慣れない一本の瓶が足されていた。

白いリボンが一巻き、名刺サイズのメッセージカードも挟まっていた。

Congratz! の一文のみ。

意味は、卒業おめでとう。
< 44 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop