嘘に焙り焙られる
「ずるいよ」とすっかり泣きはらした桐子の口がつぶやく。

この香水使うたびに思い出せって言われてるようなものではないか。

しかも香りはバニラだ。

卒業って言ってるのに全く卒業できないな。

簡単に離さないと代弁されているかのような香水だ。

机に突っ伏し、香水を並べ深いため息を吐く。

割って捨てられるのか?と問われると私には難しい。

物理的に断ち切ることが出来たら苦悩することもないのだろう。

充電コードを桐子は、手繰り寄せる。

「実は私も明日引っ越す。今までありがとう。またね」

と直矢に短めのコメントを指で弾いて、送信ボタンを押していた。

最後まで考えてることは、だいたい一緒だった。

男性用のどんな服装でも似合う茶色の革靴を最後の直矢の段ボールに忍ばせたのは桐子だった。

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