嘘に焙り焙られる
旁魄する思惑
展示会で試着をしたり、次の撮影の先方と衣装合わせを重ねたあと、正臣に鉢合わせる。

「同じ展示会だったんだね。」

メンズもレディースも両方あるブランドだ。

男女のイメージモデルに正臣と桐子が二人して選ばれた形だ。

挨拶もそこそこに、世間話をしていた。

「え、駅の南口出て川沿い歩いた先の信号右に曲がって細い道下った左のタワーマンション!?」

「え、うん。まあそう。」

「桐子のリクエスト聞いていたら、あの物件が移動距離も丁度よくて」

マネージャーの田所さんまでリラックスな展開なんだけども

「田所さん、一回考え直した方がいいですよ」と珍しく正臣が止めに入る。

「そう言われても、実はすぐ引っ越しですからね。心配は無用です。」

ケロリと田所さんはそう言うものだから、正臣は反射的にそれ以上言い返すこともせず根負けしたようだ。

「また皆で飲もうね!連絡する!」会場を後にする。


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