嘘に焙り焙られる
「じゃあ自宅に帰らせないくらいにスケジュール組んでもいい?この先、炎上して白紙になる可能性もゼロではないけど。」
「できる限り遂行いたします。」
それが私が紡ぐ最良の言葉の選択だ。
スケジュール帳を真っ暗に埋めことが、悲しいくらい大切なことはわかっている。
大体生活できる程度に片付いた新居を見渡す。
前の部屋と比較にならないほど開放的な広い窓。
そのうえ角部屋だ。
カーテンは備え付けの無機質な淡いグレー。
「今日はありがとうございました。おやすみなさい」
「戸締りはしっかりしなさい」
そう言ってにこやかに田所さんは、帰っていく。
展示会で田所さんに絶対似合うから買うべきと押し切られたサイケデリックなワンピースをハンガーに掛ける。
冷静に考えるとちょっとした立食パーティーか華やかな催しがないと着られない代物だった。
桐子は共用廊下でこんな物騒な会話が繰り広げられていることなんてつゆ知らず、水回りの整理整頓に移行中だった。