嘘に焙り焙られる
ペンギンとのガラス越しの戯れの時間が、刻々と進む。

ペンギンに狙われていた指先の光沢を、正臣の観察眼が瞬時に視線を指す。

「あれ?マニキュアみひろとお揃い?」

「この前発色と伸びのいい商品の情報交換を兼ねてね」

「くぅー、軽率にお揃いを共有できる関係。羨ましい。」正臣の煩悩まみれの顔を打ち砕きたくなる。

「snsで発信されても痛くも痒くもない親友ポジ!健全最高!」柄にもなく桐子は、誇らしげに自慢する。

「おー煽りよる煽りよる」尻尾を巻くように正臣はもう勘弁という表情である。

「しかし派手なワンピースだ」

「でしょ。ワントーン配色落とした同じ柄のワンピース買っちゃった」

「それ似合うの桐子以外いないくらい似合ってる」

「でも割と着ていくところ選ぶよね。そのチェスターコートも着る人選ぶのに正臣にぴったりだよ」

ダーティーなモスグリーンのコートが正臣に似合っていた。

最後は褒め合いで休憩時間をという撮影をつぶした。

本来の撮影はスピーディーに終わり。

だいぶ時間が余った。早く帰れる!という事実が嬉しい。



「世良さん携帯取って」直矢は世良さんを呼んだ。

世良さんは、直矢のマネージャーでダンディズムを絵に描いたような紳士だ。

「桐子もこっち入って」正臣に桐子も呼ばれる。

手のひら開き頬にあて正臣の自撮りに移りこむ。

あざとめポーズのsns用の写真を数枚とる。

「あ、私にも後で送ってね」



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