嘘に焙り焙られる
「はいカットー!それ以上進むとマネージャーと要相談案件!」と映画監督張りの仕草をみせ直矢があらわれた。
「ま、ほどほどにー」いつの間にか直矢が起きだしていた。
その言葉を残しひらひらと手を振りながら、我が物顔で浴室へ消えていく。
助け舟を出してくれたと受け取ってもいいのかな。
否、行為を肯定されても困る。
曖昧模糊な牽制だなと思う反面、彼氏面するならしっかり演じよという欲望も少しくらい沸いてしまう。
「二人の秘密知ってるよ。」恭兵はわざと音を立て瞼にキスを落とした。
それきり甘い雰囲気が消え失せ、知っている恭兵へと戻っていった。
結果として、一時的な拘束がまんまとほどかれたわけだけども、わからない。
事故?故意なの?脅し?私には、わからないよ。
どこまで直矢との関係性を知られているのかと脳内はパニックに陥る。
その場にペタンと座り込み呆然とするものの、恭兵が空き瓶を桐子の頬にスッと貼り付けた。
「冷たっい」と桐子がじっと不満そうに視線を返すと小さく恭兵は笑い、率先してテキパキと部屋を片付け始める。
カランコロンと瓶やら缶やらごみ袋にまとめつつも、適度な距離で友達関係を築いてきたつもりだったということにショックを受けている。
宅飲みといっても少人数で適度に騒がしく、いい友人関係だと一ミリも疑いを持たなかった。