その唇で甘いキスをして…
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アタシはカオルに悪いと思いながら
ハルさんに逢うのをやめられなかった。

カオルは最近仕事が順調で依頼も増えた。

仕事の内容は教えてくれないが
その日はカオルに頼まれて一泊用の着替えを準備した。

「今夜は仕事で泊まりになる。」

「うん。気をつけて。」

「ジュン…浮気しないでな。」

ハルさんがアタシによく言ってた事をカオルに言われるようになった。

いつの間にかハルさんと逢うのが浮気になった。

「どうした?」

返事をしないアタシの顔を覗き込んでカオルが聞いた。

「アタシってそんなに浮気しそう?」

「え?」

「ハルさんも同じこと言ってた。」

「オレの事だろ?

オレもハルさんの事を言ってる。」

「ハルさんは浮気なのかな?」

カオルの顔が曇ってしまった。

「ごめん。行ってらっしゃい。」

アタシはカオルの頰にキスをすると
カオルが唇にキスしてきた。

それは舌を絡めるほどのキスで
行ってきますのあいさつじゃなかった。

「カオル…もう行かないと…」

「うるせー。」

カオルは熱を持ったアタシの身体を鎮めるように
最後まで愛してから仕事に行った。

アタシは玄関に座り込んでカオルの余韻に浸る。

今日は絶対にハルさんに逢うべきじゃないと思った。

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