その唇で甘いキスをして…
「帰る時、ジョウはすごく寂しそうだった。」

アタシは帰る時のジョウの顔を思い出して胸が痛くなる。

ハルさんもきっとジョウの事を思うと胸が痛くなるんだろう。

「ジュン…もう帰って来ないか?

いつまでもこんな風に逢うのは…

ジョウだって可哀想だろ?」

アタシは帰りたいけど
それにすぐ応える事が出来ない。

「カオルと話しがしたい。」

「ハルさん…それは…」

「オレはこのままだと無理にでもカオルとお前と引き離すよ。」

ハルさんはそれができる人だ。

でもカオルのためにそれをしないで堪えて来た。

「お前が素直に帰ってくればそんな事をしなくて済む。
それから友達としてならこれからも逢うのは許すよ。」

ハルさんがここまで言うのは余程の事だ。

カオルとの生活はここまでが限界だと思った。

「わかった。とりあえずカオルにはアタシから話すから…少しだけ待って。

今日は出張で居ないから…帰って来たら話すから。」

「アイツ、今日は居ないのか…

なのに早く帰ったんだな?」

「え?…あー、今日は週末でお店忙しかったから。
いつものバイトの子も休みで…。」

ホントはさっきまでその子も働いてた。

でも今日は予想以上に忙しかったから
アタシが早めに帰ったのは正解だった。

「そうか…。」

ハルさんにまた嘘をついた。

アタシももう限界だった。

ハルさんにも嘘をつくのも…
カオルに嘘をつくのも…。

ジョウと離れて暮らすのも…。





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