その唇で甘いキスをして…
カオルはかなりお酒を飲んで潰れてしまった。

ハルさんがゲストルームへ運んで
アタシとハルさんは昔の寝室で眠る。

ハルさんと愛し合ったベッドは懐かしくて
幸せだった記憶が蘇る。

それはハルさんも同じだった。

「懐かしいな。そんなに経ってないのに…
ここではいつも幸せだった記憶しかない。」

ハルさんはその細くて綺麗な指でベッドを撫でるように滑らせていく。

「うん…そうだね。」

ここに居た頃はハルさんしか見えなかった。

ハルさんはアタシの顔を見て

「何でそんな悲しそうな顔をするんだ?」

と優しく聞いた。

「ごめんね。

アタシ…ハルさんを傷つけてばっかりで…」

カオルを見たら余計にその傷を広げてしまった気がして…アタシは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

一度裏切ってしまうと…絶対に元には戻れない。

アタシはそんなことも分かってなかった。

時々あの時の自分を憎んでしまう。

ハルさんはアタシの腰に腕を絡めて抱き寄せる。

「もう忘れたよ。

だからジュンも忘れてくれ。」

それがハルさんの優しい嘘だとわかるから
余計に切なくなった。

薄れてもゼロになることは決して無いのだから。

ハルさんはアタシにキスをして
昔みたいに愛してくれる。

アタシはまるで初めてハルさんに抱かれた時みたいに緊張していた。

あの夜、もしかしたらハルさんがアタシを抱くのを途中で躊躇うんじゃないかと思った。

アタシのカラダには汚された痕がある。

目には見えなくても…そういう負い目がある。

ハルさんはその事実を知ってたから怖かった。

そんな風に緊張したのは何故かハルさんだけだった。

あんなに緊張した夜はなかったけど
今日はあの夜と同じくらい怖かった。

カオルに会って…ハルさんはあの時の
苦い記憶を思い出したハズだから。

ハルさんに途中で避けられそうで怖い。

「力抜いて。

初めてみたいに震えてる。」

ハルさんがそう言ってアタシの脚を開いた。

「ハルさん…アタシ…こんなに幸せでいいのかな?」

ハルさんは笑って

「幸せなのか?」

と聞いた。

「幸せ過ぎて…怖いよ。」

「じゃあもっと幸せにしてやるよ。」

ハルさんはそう言ってアタシに触れる。

アタシは蕩けてく自分を感じて真っ白になる。

「ハルさん…」

そしてその愛しい名前を何度も叫んだ。
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