その唇で甘いキスをして…
アタシは手術室の前で手を合わせて祈った。

ハルさんの温かい手がアタシの肩を抱く。

それだけで少しだけアタシは安心する。

「大丈夫。そんなに心配するな。

アイツはお前を置いて行ったりしない。」

アタシは昨日、2人で逢うのはやめようと言ったことを後悔した。

「アタシ…カオルに逢わないって言っちゃった。

カオルが一番辛い時に突き放したの。」

ハルさんはそれが自分のせいだと思って

「ごめんな。そんなことお前に言わせて。」

と言った。

「ハルさん…

アタシはハルさんをホントに愛してるけど…

カオルの事も大事なの。

カオルに何度も助けられたし…

昔、ハルさんが全然アタシを愛してくれない時だって

その分カオルが愛してそばに居てくれた。

寂しくて泣きたい時は一緒に泣いてくれるの。

この前、カオルに気持ちが揺らいだことはいけない事だけど…

あんなことはもうしないから…側に居させて。」

ハルさんは暫く何も言わずにアタシの髪を撫でた。
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