その唇で甘いキスをして…

暫く黙ってたハルさんがその重い口を開いた。

「オレはまだまだだな。

嫉妬して周りが見えなくなったのは初めてだ。

お前の全てを理解してやるつもりだったのに…」

ハルさんは溜息をついて目を伏せた。

「ハルさん…」

「心配するな。

お前からカオルを取り上げたりしない。

お前たちが切れない縁ってのはわかってる。

でも…オレに隠れて男と女の関係になるのはやっぱり許してやれない。」

「当たり前だよ。
そんなこと許されたらアタシが悲しいよ。」

その時手術中のランプが消えた。

「カオル…」

ハルさんとアタシは立ち上がって手術室のドアの前に立った。

先生が来て

「無事に終わりました。」

と言った。

アタシは力が抜けてその場に座り込んだ。

ハルさんは先生と話をして
アタシはカオルが出てくるのを待った。

カオルは麻酔で眠っていて
アタシたちは起きるのを待ってた。

暫くして目を覚ますと
カオルはアタシを見て

「ジュン…ハルキさん?

え?どこ?」

と聞いた。

アタシは涙が溢れて言葉にならなかった。

ハルさんが

「お前、事故ったんだぞ?覚えてないのか?」

と聞いた。

泣いてるアタシを見て
カオルは手を伸ばしアタシの頰に触れる。

「心配かけてごめんな。
泣かせてばっかりだな。」

そう言ってアタシの涙を拭う。

カオルの手が温かくて生きてることを実感する。

ハルさんは

「電話かけてくる。」

と席を外した。

多分アタシとカオルが2人になる時間を作ってくれたんだ。

アタシはカオルに言った。

「生きててくれてありがとう。」

カオルは

「お礼にキスしてくれよ。」

と笑った。
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