その唇で甘いキスをして…
次の日カオルの顔を見られなかった。

ハルさんは涼しい顔で何もなかったように
ピシッとした身なりで
コーヒーを飲んでる。

そしていつものように

「じゃあ出かけて来る。

ジョウ出かけるぞ。」

って席を立った。

「うん。」

とジョウが返事をしてハルさんの後を追いかける。

ジョウは毎朝ハルさんの車で
ハルさんといっしょに通学する。

アタシはハルさんとジョウを門まで見送り
ハルさんはアタシに微笑みジョウが手を振る。

振り向くとカオルが窓からその姿をただ黙って見ていた。

「アタシも出かけないと…」

カオルと目を合わさず
アタシはカフェに行く支度をした。

「俺も店に行っていい？」

「でも…」

「家にずっといるのも退屈だし、
事務所の様子も見て来ないとな。」

カオルはアタシの車で
店まで一緒に行った。

車の中に長い沈黙が流れる。

「ギブス、いつ取れるんだっけ？」

その沈黙に耐えられずアタシはカオルに話しかける。

「何かやましい事でもあるの？」

急にカオルが話しを変える。

「な、無いけど…」

「もしかして昨日ハルキさんと寝た？」

アタシは動揺して信号を見落としそうになり
急ブレーキを踏んだ。

「あっぶねぇ。」

カオルがビックリして前のめるアタシの前に手を差し出した。

「ごめん。」

カオルは窓を開けて外を見ながら言った。

「寝たんだな。」

って切ない声で…


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