その唇で甘いキスをして…
liar
ハルさんが出て行って
アタシは支度を始めた。

ハルさんに連れ戻される前にここを出てカオルの所に行こうと思った。

カオルの事務所に行くと
お酒のビンが転がってて
カオルはソファでまだ眠ってた。

アタシはビンを拾い
カオルの頰を撫でる。

「あ、ジュン…」

「今日からここに泊めて。」

カオルは心配そうな顔でアタシをみる。

「ハルさんか?」

「…。ここはお店に近くて便利だね。」

「ジュン、ジョウは絶対連れてくるから。」

「こんなとこであの子は暮らせないよ。」

カオルに酷い言い方をしてしまった。

「ハルさんのトコに戻りたい?」

突然、気持ちを読まれた気がして慌てて首を横になって振った。

「まさか…

お店に行くね。」

カオルの勘はすごく鋭い。

それを悟られてはいけないのに…

アタシが店に行って暫くするとハルさんが来た。

「帰らないつもりか?」

「ごめんね…もう戻れないよ。

わかるでしょ?」

「許すって言ったろ?」

お客さんが来て、会話が途切れる。

アタシはホッとしていた。

「夜、迎えに来る。」

ハルさんはそう言って店を出て行った。

アタシはハルさんを忘れたくて仕事に没頭した。

夜になるとハルさんが迎えに来て
カオルと鉢合わせした。

カオルはきっとあの夜の事を話すだろう。

アタシはハルさんに捨てられる覚悟をしなくてはならないようだ。

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