その唇で甘いキスをして…
「オレにどうして欲しい?」

カオルは哀しそうな顔で怒ってる。

「ここには来ないで。

ハルさんのマンションだから。」

「お前はオレと暮らすんだろ?」

「よく考えたらカオルの事務所もハルさんが買ったんだよね。」

「何が言いたいんだよ?」

「アタシたちハルさんになにから何までお世話になってるのに…
非道すぎるよね?」

カオルのプライドを傷つけてしまった。

「あの夜、ジュンを捨てたのはハルキさんだ。」

「カオル…あの夜の事だけど…

ハルさんにホントの事は言わないで。」

アタシはカオルを更に傷つけた。

「どういう意味?」

「ハルさんを傷つけたくない。」

「お前は自分がハルキさんに戻りたいだけだろ?」

「戻りたいけど…もう無理でしょ。

カオルと寝たのをずっと後悔してる。

なんでカオルの身体があの時…

カオルの身体がダメだったらこうはならなかった。


「入れても入れなくても同じだろ?

お前はたとえオレと出来なくても
それ以上にあの時オレと愛しあってたろ?」

そうだ…それは間違いじゃない…

本当はそんなこと全然重要じゃない。

アタシはあの時…心でもカラダでもハルさんを裏切ってカオルに傾いた。

カオルが優しくて…大切で…カオルしか居ないと思って…離れたくなかったんだから。


それでもハルさんはきっとその最後の一線にこだわると思った。


< 99 / 131 >

この作品をシェア

pagetop