恋デート 【絶対にキスをする】
「正直、前までなんであんなべたべた美咲先輩に触れてたのか、自分でもなんか自分が意味わかんねぇくらいで……もー、俺、美咲先輩が好きなんです、大好きなんです。美咲先輩が『あの咲也先輩の妹さん』って知ってたけど、でもそれより先に俺、美咲先輩に一目惚れしてたんです」
「うそ、」
「ホントです。女子マネん中でいちばんおっかなくて、てきぱき仕事してて、後輩の面倒見よくて、一生懸命で、かわいくて。美咲先輩に叱られながら、実は俺メロメロになってました。
……でも今の俺、先輩が好きになってくれた俺とは違うんスよね?……こんなカノジョといるだけでテンパるくらいドキドキしてるようなガキなんて、全然タイプじゃないんスよね?」
凌空はなぜか悔しそうな顔で言ってくる
「でも俺、マジ、好きなんです。美咲先輩のこと、諦めたくないです」
それから凌空は突然身を乗り出してあたしの両手を握り締めて言ってきた。
「俺、ウザいくらい美咲先輩にめちゃくちゃつきまとって、どうにかこうにかカレシにしてもらったけどさ。俺、美咲さんが好きだ。だからぜってぇ別れてあげねぇし!!……別れるなんて取り消してください。俺、頑張るから。いつかちゃんと、先輩が好きって言ってくれた俺になるから」
真剣な目。凌空の手が、小刻みに震えてる。
そうだ、ほんとうに好きな人に触れるときってこんなふうに緊張するんだ。それはあたしも凌空も一緒なんだ。
そう思った途端、たまらなくなった。
思いが大きすぎて勇気が出なくなるの、あたしもよくわかる。今凌空がどれだけ精一杯あたしの手を握ってくれているのか、その振動からちゃんと伝わってくる。