恋デート 【絶対にキスをする】
「ねえ凌空。ちょっとは一緒に景色見ようよ」
観覧車の高度があがって、視界が開けていく。子供の頃からこの瞬間がすごく好きだった。
……でも今はちょっとつらい。
観覧車って意外に別れ話をするには丁度いいのかもしれない。密室だし。気まずくなっても2人きりでいる時間はすぐに終わるし。
それにどんどん高くなっても、ピークすぎたら後は落ちていくだけって、なんか恋に似てる。
てっぺんでいちばん最高の景色を見てしまった後は、終わっていくのをただ静かに待つしかないんだ。
あたしの恋のピークは、凌空が頷いてくれたあのとき。
顔を真っ赤にして『美咲先輩と付き合えるなんてマジうれしすぎっス!』って言ってくれたあのとき。
凌空と両想いだったって、信じることが出来た、あの瞬間。
だからあたしの恋はこれから落ちて冷めていくだけなんだ--------。
「意外に早いっスね」
あっと間に下って地上が迫ってきているのを見て、凌空はぽつりと漏らす。
そう、早いんだよね、人の気持ちが変わるのは。恋なんていつか終わる。でもあたしはもっと長く凌空と観覧車に乗っていられると思っていた。
近付いてくる空を見てもっとずっと一緒に笑っていられると思っていた。