恋デート 【絶対にキスをする】
今までありがとう。
ほんのひとときでも、凌空が彼氏でいてくれてうれしかったんだよ?
言葉に出来ないそんな思いを胸の中だけで繰り返してから、あたしは自分を奮い立たせて凌空を解放するためのもう一言を口にした。
「もうさ、あたしら無理に一緒にいることないじゃん?だから、別れよ」
年上らしくもっと毅然と言いたかったけど、好きの思いが強すぎて涙がにじんでしまう。でも最後までちゃんと言えた。
あたし、がんばれた。
「何、言ってんすか。意味、分かんないんスけど」
「………大丈夫、凌空いい子だもん」
凌空はチャラく見えるけど実はすごく一生懸命なコで、土日も部活の自主練を欠かさない。だから今日もすっごいひさしぶりのデートだった。
「いい子ってなんですか。俺のこと、もうただの後輩にしか見えないってことっスか」
恋人に見られなくなったのはあたしじゃなくて凌空のくせに。
「………そうじゃなくて。あたしと別れたって、咲也は今まで通り凌空のこと可愛がるよ……だから心配ないよ……」
「はあ?今は咲也先輩のことは関係ねぇだろ!!なんでだよ、ぜってぇ別れねぇし!何言ってんだよ!!」
凌空はいつもあたしの言うことを素直に聞いていた。体育会系気質で、付き合ってからも年上のあたしに対して決して敬語を崩さなかった。
でも今は先輩後輩って壁を蹴り破って、余裕のない顔であたしに詰め寄ってくる。
「言えよ、なんでだよっ!?何がダメなんだよっ」
「………だって凌空、あたしのこと………そんなに好きじゃないでしょ……?」