repeat
第2話
10月27日(木)PM5:00、放課後。
約束通り晶と彩花はスタバ内の座席で向かい合っている。この時間帯は高校生で溢れかえっており、その大半が茶屋高の生徒だ。冬が間近ということもあり、店内にはホットメニューの新作案内が所狭しとアピールされている。
晶はテーブルにあるプリンパフェには全く手を付けずに彩花との話に熱中している。今の晶には甘いモノより不思議話の方がご所望のようだ。
「晶、すっごい楽しそう」
「分かる?」
「分かるよ。眼が輝いてるし」
彩花は呆れたように言う。
「で、具体的な内容を話して。昼休みからずっと気になってたんだから」
「分かった。まず、私がどういう状況か簡単に説明すると、時間のリピートが起こってるの」
「リピート?」
「ええ、言葉通りの意味で、一度経験した同じ時間を繰り返してしまうの。例えば、今日帰宅して寝たとするよね? で、目が覚めたらまた今日なのよ」
「日にちが進まないってこと?」
「そ、何日も同じ日を繰り返しているってこと」
「それ、最悪じゃん」
「最悪だよ」
彩花は慣れてるようで事も無げに話す。きっとこのセリフも過去に何度も言ってきたに違いない。
「ふむ。でも、ずっと進まないって訳じゃないでしょ? でないと彩花の不思議な行動にあたしが気付けた理由が説明できない。ここ何日か連続で、フードの葉を見ずに取るという不思議な行動をしていたということは、同じ日を繰り返してはいるが、何かのきっかけで次の日が来ている、そうでしょ?」
「その通り。何度聞いても晶の推理は的確ね」
「……あたしとスタバに来たのは何回目?」
「三回目よ。正確に言うと、10月27日木曜日のスタバは二回目」
「一回目であたしは何を話したの?」
「ん~、すっごいこと言ってた。まず、晶の目を引くことをさりげなくしろってことを言われた」
晶は『ん?』という表情をする。
「つまり、晶に私の存在を気付かせて、協力してもらえるように行動しろってこと。しかも、さりげなく」
晶は目を閉じて分かりにくい状況を頭の中で想像して理解しようとする。
「ちょっと紙に書いてまとめるけどいい?」
カバンを開けようとする晶に彩花が待ったをかける。
「待って晶。書かなくても大丈夫。二回目に会ったときの晶が書いた内容を、私がさっき思い出して書いといたから」
「なるほど、昼休みに言ってた準備とはそのことか。未来を知ってるって便利~」
晶は感心しながら彩花が書いたメモ用紙を受け取る。
【リピートの内容】
1:リピートは彩花の中だけで起きている
2:リピートは就寝し起床後に起こる
3:リピートしても記憶だけは蓄積される
4:リピートが最初に始まったのは9月26日
5:二十四時間以上起きていても、一度寝て起きたときに戻る日付は一緒
6:リピートが起きない原因は現在不明だが、起きる原因の一つに彩花の方から誰かへ、リピートの相談をしたときは高確率でリピートする模様
7:曜日でリピートの有る無しの統計を取ったが法則は見つからず
二枚目をめくると、晶とのやりとり、というタイトルが書かれてある。
【晶とのやりとり】
1:(月曜日)晶と初めて話したのは10月24日、月曜日。駅前のスタバにてリピートの概要を話す。今度リピートして今日の記憶をリセットされてもいいように普段から晶に対して気付いてもらえるようさりげない行動を取るようにアドバイスされる。
案の定、月曜日は一回繰り返し、次の日再度晶との接触を試みたが彩花のミスにより失敗。その日、リピートはせず火曜日に進む。
2:(火曜日)月曜日の晶からのアドバイスのとおり、晶が毎朝紅葉の中庭を観察しているのを逆手に取ったアプローチ作戦に出る。しかし、火曜日は空振りに終わりリピートを一回する。
3:(水曜日)火曜日と同じアプローチで行動する。視線は感じるがやはり接触までには進まずリピートを一回する。
4:(木曜日)ついに晶から接触があり。月曜日においてのやりとりはリピートでリセットされてるので、また初めてのときのように振る舞い説明をする。会話内容は月曜日と大して変わらず、気付いてもらえるように行動するのと、リピートされなかった翌日にリピートしたかどうかの報告と、その後リピートがあればリピートの回数を教える。しかし、この日はリピートが起こってしまい、また振り出しに戻る。
5:(木曜日二回目)今日に至る。