repeat
第6話
【リピートの概要】
※リピートとは、同じ日を幾度も繰り返してしまう現象を指す。
例:リピートにかかっている人物が床に着き(仮に月曜日)翌日起床してもまた同じ日(月曜日)がスタートする。
※現在リピートに陥っているのは小林彩花のみ。
【リピートの内容】
1:リピートは彩花の中だけで起きている
2:リピートは就寝し起床後に起こる
3:リピートしても記憶だけは蓄積される
4:リピートが最初に始まったのは9月26日
5:二十四時間以上起きていても、一度寝て起きたときに戻る日付は一緒
6:リピートが起きない原因は現在不明だが、起きる原因の一つに彩花の方から誰かへ、リピートの相談をしたときは高確率でリピートする模様(生徒会の深山先輩に幾度となく相談したが必ずリピート)
7:曜日でリピートの有る無しの統計を取ったが法則は見つからず
8:リピートをすると、当日受けた身体的な怪我等は治る(怪我をする前の朝に戻るため)
【久宝晶とのやりとり】
1:(月曜日)晶と初めて話したのは10月24日、月曜日。駅前のスタバにてリピートの概要を話す(話すきっかけになったのは怪我による偶然)今度リピートして今日の記憶をリセットされてもいいように普段から晶に対して気付いてもらえるような行動をさりげなく取るようにアドバイスされる。案の定、月曜日は一回繰り返し、次の日再度晶との接触を試みたが彩花のミスにより失敗。その日、リピートはせず火曜日に進む。
2:(火曜日)月曜日の晶からのアドバイスのとおり、晶が毎朝紅葉の中庭を観察しているのを逆手に取ったアプローチ作戦に出る。しかし、火曜日は空振りに終わりリピートを一回する。
3:(水曜日)火曜日と同じアプローチで行動する。視線は感じるがやはり接触までには進まずリピートを一回する。
4:(木曜日)ついに晶から接触があり。月曜日においてのやりとりはリピートでリセットされてるので、また初めてのときのように振る舞い説明をする。会話内容は月曜日と大して変わらず、気付いてもらえるように行動するのと、リピートされなかった翌日にリピートしたかどうかの報告と、その後リピートがあればリピートの回数を教える。しかし、この日はリピートが起こってしまい、また振り出しに戻る。
5:(木曜日二回目)一回目の木曜日と同じ展開で晶が接触してくる。これまでの状況を話したところ、一回目以上に理解を深めてくれることになる。帰宅後、晶から連絡が入り新たな作戦を行うように指示を受ける。
上記『リピートの内容6』で推測されていた自分から誰かに相談した場合リピートする可能性が高い、という内容を確実に裏付けるために、今まで相談してこなかった男性へのアプローチを試みることにする。その相手には晶の知り合いである草加真さんを使うことにする。
晶の推理によると、リピートはリピートを解決しようと協力する者を排除する意志があると最初は考えた。しかし、リピートという現象が彩花を守ったり彩花に何かを求めるために起こっているというスタンスで考えた場合、リピートは協力者を否定しているのではなく、協力者を選別しているのではないかと考えることができる。
彩花がこれまで相談してきた相手は深山先輩に晶、いずれも女性。これらのことから、リピートが求めている可能性のある、男性に対してリピートの話をするという作戦を試みることになる。木曜日二回目も晶の予想通りリピートする。
本日(木曜日三回目)に至る。
【晶から草加真さんへの伝言】
晶が彩花のリピート現象を信じたのは、ちゃんとした裏付けによるもの。少人数しか知りえない緊急用携帯番号(080-****-****)を既に知っていた。未来を体験していないとできない行動も確認済み。疑い深い真さんに晶から信じてもらう為の特殊なキーワード『姉妹逆転』
最後に、真さんに相談したことによりリピートが止まり、ちゃんと曜日が進んだ場合、晶に報告はせず自力でリピートを解決すること。
※晶に報告することで再びリピートする可能性を食い止めるため。
【彩花の行動パターン】※晶曰く、リピートを解く鍵は行動パターンに有り
・9月23~25日(金~日):母方の実家に帰省し、墓参りをする。
・9月26日(月):その日、就寝し朝起きるとまた月曜日だった。この日が最初のリピートで、この月曜日は四回繰り返し、やっと火曜日に進む。
・9月27日~29日(火~木):リピートを全くせず、すんなり曜日が進む。
・9月30日(金):再びリピートする。回数は一回。この日はアルバイトで棚卸し作業があり就寝時間が日付を回る。
・10月1日、2日(土、日)とリピートする。回数は土曜日二回、日曜日一回。土、日の連休で親戚の家に行く。帰りに車が脱輪する。
・10月3日以降は記憶薄のため不明。
・10月10日(月):リピートする。回数は三回。体育の日で祝日だが、学校で運動会。
・10月11日~23日までは記憶薄。週に三回はリピートをしていた。
以下は『晶とのやりとり』に続く。一番最後の用紙には彩花の個人情報と晶の緊急用電話番号。さらには晶が勝手に教えたと推察される真の携帯番号が書かれてある。
「なるほどね」
真は耳たぶをさすりながら目を閉じて何かを考えている。彩花は真から口を開くのをじっと待っている。
「何から聞いてよいのやら。まず、聞くまでもないかもしれないけど、念の為に聞くよ。晶と二人で僕をハメようなんて話じゃないよね?」
「冗談で晶が緊急用番号を真さん以外の人に教えると思います? それに『姉妹逆転』というキーワードは晶と真さんにしか分からない、重要な言葉だって言ってましたよ」
「確かに、教えるなんて有り得ないな。それにそのキーワードも、晶本人だけにしか言えないキーワードだ」
鹿島優の事件の後、真は久宝探偵事務所の手伝いをすることがあった。そして、晶とのホットラインとしてこの番号を教えてもらっていたのだ。
「私のこと、信じて頂けますか?」
「もちろん。疑ったりしてすまなかった。君の現状を信じるし解決のために協力をするよ」
真は真剣な眼差しで応える。そのセリフにホッとしたのか彩花は溜め息をつく。
「それにしても、とんでもない事態に遭遇してるね。ここに書いてあるように協力者を排除するかのようにリピートされている。それにも拘わらずよくここまで推理を進めたもんだ」
真は感心しながらリピートの内容部分に軽く目を通している。
「私はほとんど何もしてなかった。一回目の月曜日、晶に偶然話さなかったらここまではこれなかったと思う。晶がいなかったら私はどうなってたか分からない」
彩花の悲しげな表情に今までどれだけ苦しんできたのかが見て取れる。
「君の気持ちは察するよ。しかし、重要なのは今日リピートするかしないかだろう。晶の推理通り、男性への相談で現状を打破できるかどうかは分からないからね」
「はい。でももし今回の作戦がダメだとしても、晶が次の作戦を考えているのでそれにかけてみます」
「ははっ、ちゃんと先のことも計画済みって訳か、晶らしいな。ともかく現状はだいたい分かった。昼休みももう終わるし、いろいろ聞きたいこともあるから、放課後どこかで落ち合って詳しい話をしよう」
「はい、では私は帰りに駅前で待ってますので適当なお店でお話しましょう」
「了解」
「では、お先に失礼します」
丁寧に挨拶をして彩花は去って行く。真は用紙をデスクに置き、リピートの内容を反芻するかのように外の景色を眺める。中庭では紅葉の葉が絶え間なく舞っていた。