クールな御曹司にさらわれました
「私、あなたが好きなんだと思います」

「好き……」

尊さんがきょとんと呟き返す。

「俺のことが?」

「今、主語述語使ってはっきり言いましたよねぇ!!」

「もう一回」

尊さんの頬が見たこともないほど緩んでいた。その表情の変化を不覚にも可愛いと思ってしまう私はとっくに彼に惚れている。

私は尊さんに向き直り、彼の左手を取った。

「尊さんのとんでもないところ、冷たいところ、意地悪なところ、優しいところ……全部ひっくるめて大好きです」

言い終わるやいなや、尊さんが私の腕を引いた。そのまま背の高い彼の腕の中に引き入れられてしまう。
髪にかかる彼の暖かい吐息。安堵のため息のようだ。

「……よかった……」

「尊さん」

「嫌われて逃げられたと思ったときは、死ぬほど苦しかった。今は死ぬほど幸せだ」

「おおげさ……」

見上げて言った言葉は最後まで言わせてもらえなかった。尊さんの唇が私の唇に重なっていたからだ。
柔く重なってすぐ離れた唇。私は彼を見上げ、にこっと笑った。

「不意打ちは嫌ですってば。きちんとしてください」

「わかった。キスしてもいいか?」

「はい」

少し背伸びして、尊さんの肩に両手を置くと、私は彼の唇にキスをした。

「結構遠回りしたな。俺たち」

「追いかけっこした分、距離的には遠回りでしたね。……でも、このくらい時間をかけて育てるのが恋じゃないですか?」

確かに、と尊さんが微笑んだ。

「タマはなかなかいいことを言う」





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