此処ガ私ノ還ル場所
二年後。紅太は就職先で精を燃やした。楓はリハビリも成功してなんとか歩けるようにはなった。そして投稿した小説も審査委員長賞を受賞。出版まで漕ぎつけた。紅太には手の届かない存在になりかけていた。
「おめでとう。」
暗く重い声。嬉しいのだが悲しくもあった。
「……。」
黙る楓。
「私、帰るね。」
静寂を割ると、一方的に帰った。それからしばらく会わせる顔がなかった。
三ヶ月後。紅太のもとに一本の電話が入る。向かう先は楓が収容されていた病院。
「楓は!」
そこにいたのは楓の両親。
「今、オペをしている……。」
下を向く父。母も同様であった。
「あの娘、黙ってたのね、みんなに。」
「倒れたって聞いたけど症状は!?」
「脳内出血、あの時の障害がこんな結果になるなんて……。」
涙ぐむ母。ただ祈るしかない人の弱さ。


…………。


−お元気ですか?私は元気です。結果は裏切ってしまったことお詫びします。いつまでもいつまでも見守ってます。私は……私の還る場所を求めて旅立ちます。さようなら。

風の声は微かに聞こえた。
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