ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「いや、もうホントに私のような若輩とかじゃなく、もっとベテランの方に……」
恐縮して口にすると、
「……若輩?」
と、聞き返された。
「……女性に年齢を聞いて悪いが、君は、年はいくつなんだい?」
「……33歳です。……30過ぎて、何をやってるんだと思うかもしれないですが、」
話すのに、
「だったら、私とは8歳しか変わらないじゃないか。私は、41歳だからな」
言われて、
「…41!?」
と、声を上げる。
こんなにもスーツを格好良く着こなした男性が、私と8つしか違わないの?
「……だって、会長なんて言われるから、もっと年上の方だと……」
嘘でしょ……とも思いながら、顔を改めて見てみれば、口元の髭が年齢を高めても見えるだけで、意外と若くも感じられるみたいだった。
「……息子がいい年にもなったんで、社長職を早くに譲ったんだ。会長としても、まだ私に権限はあるがな」
「そうなんですか…息子さんに…」
と、コーヒーカップを持ち上げて、
41歳になんか見えないくらいの、苦味走った美男って感じなんだけどーー
カップ越しに、その顔を盗み見た。