ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

……中に入ると、

「…風呂はどうする?」

と、いきなり訊いてきた。

「…ど、どうするって……?」

その聞き方は、どういう意味があるんだろうと考えるそばから、

「…ああ、食事も済ませてきたし、風呂に入った方がいいだろ」

言われて、ただの天然っぷりに、また勝手に自分が翻弄されてるだけだと気づく。

……この人には、勝てない。そして、どうしようもなく振り回されるしかないんだと……。

「……お風呂、お先に入られてください…」

少し脱力して言うと、

「…え? 一人で入るのか?」

と、訊いてきた。

……今度は、一体なんなんだろうと思う。一人で入るに決まってるじゃないですか……って、まさか一緒に入ろうとか誘ってる……?

いやいやいや…この人は、なんにも計算とかしてないんだから、そんなわけも……。

「……一緒には、入ってくれないのか?」

と、尋ねられて、ウソ…と、驚く。



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