ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
……デジャヴ……何度目かの既視感が襲う。
……また、寝ちゃったんですか……?
つかんだままのグラスを、手から取り上げてテーブルに置くけれど、目を開ける気配はなくて、
「……どうして、いつもこう……」
とろんと閉じている目蓋に、ため息が漏れ出る。
無造作に結ばれていた帯が、わずかにほどけて、乱れた着物の隙間から覗く肌に男の色香が滲み出ている。
もう、どうしてくれようか……さんざ翻弄しといて……。
憎たらしいくらいの色気に、少しくらいなら振り回されっぱなしな仕返しとかしてもいいかななんていう気持ちが、ふつふつとわき起こる。
ほどけている帯を解いて、しごいて、
「……縛ってみちゃったりしてもいいかな……」
そんな仕返しがふと浮かんで、
手首をひとつずつくくって、真ん中から伸ばした余った帯の先を、ベッドの背もたれの柱に結んだ。
……。……エロい。……妖しすぎて、直視できない。
自分でも、何をしてるんだろうと、これじゃ変態みたいじゃないですかと、早々にほどこうとしたら、
「……ん?……何をしてるんだ?」
と、急に彼が目を覚ました。