ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

ギッと結んだ帯が引きつれるのに、

「……手の自由がきかないと、もどかしいもんだな…」

呟いて、

「……もっと、してくれないか…」

低く、吐息混じりに誘いかける。

「……私から、ですか?」

そのわずかにあく唇のなまめかしさから、目も離せないままで返す。

「……拘束されていて、動けないだろう? 私の方からは」

吸い寄せられるように唇を重ねると、

「…んっ…く」

声が漏れて、その色香に虜にされる。

帯もなく、はだけられた胸元に、指の先で触れると、

「…ん」と、わずかに喉が波打って、

しっとりと熱く、滑らかなその肌をなぞりたくなる。

太く血管の浮く首筋を指でなぞって、口づけたら、

「……これ、取ってもらえないか?」

と、見つめ返された。



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