ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

「おはよう。よく来てくれたね」

濃紺の地にグレーのストライプの入ったスーツを着た蓮見会長と、その後ろからビジネスカバンを抱えた年配の女性が現れた。

「おはようございます。あの、今日からどうぞよろしくお願いします」

頭を下げると、

「堅苦しいあいさつはいい。もっと普通にしていてくれ」

と、言葉をかけられた。

「……陽介様、今度の運転手さんは、またえらくお若い女の方なんですね?」

背後の女性が、口をはさむ。

「…え? あっ…そんなに若いってわけでもなくてだな…」

言いかけて、

「あっ…と、すまない…」

失言したとばかりに、口を押さえた。


「…いえ、別にかまわないですから。たいして若くもないのは本当ですし」

言うと、

「……おいくつなんですか? そちらの方は?」

と、女性に訊かれた。

「…33です」

答えると、

「まぁ、本当にたいして…」

口にして、「ふふっ…」と、愛想笑いを浮かべて、

「33歳なら、陽介様ともあんまり年が違わなくて……ようございましたね?」

と、意味ありげに微笑んだ。



< 15 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop