ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「おはよう。よく来てくれたね」
濃紺の地にグレーのストライプの入ったスーツを着た蓮見会長と、その後ろからビジネスカバンを抱えた年配の女性が現れた。
「おはようございます。あの、今日からどうぞよろしくお願いします」
頭を下げると、
「堅苦しいあいさつはいい。もっと普通にしていてくれ」
と、言葉をかけられた。
「……陽介様、今度の運転手さんは、またえらくお若い女の方なんですね?」
背後の女性が、口をはさむ。
「…え? あっ…そんなに若いってわけでもなくてだな…」
言いかけて、
「あっ…と、すまない…」
失言したとばかりに、口を押さえた。
「…いえ、別にかまわないですから。たいして若くもないのは本当ですし」
言うと、
「……おいくつなんですか? そちらの方は?」
と、女性に訊かれた。
「…33です」
答えると、
「まぁ、本当にたいして…」
口にして、「ふふっ…」と、愛想笑いを浮かべて、
「33歳なら、陽介様ともあんまり年が違わなくて……ようございましたね?」
と、意味ありげに微笑んだ。