ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「何が、いいんだよ…華(はな)さん…」
一瞬、なぜだか照れたような表情になって、
「…ああ、この人は、名越 華(なごや はな)さんと言って、家のお手伝いをずっとしてもらっている人で、私にとってはばあやみたいな存在なんだ…」
と、話題をそらすようにも紹介をした。
「…はい。私は、鈴森 佐織と言います。今日から、会長の運転手をさせてもらいますので、よろしくお願いします」
軽く頭を垂れると、
「ええ、よろしく。だけど、お気をつけくださいましね。陽介様は、これで意外とたらしなところがありますから」
含むように話して、声をひそめる。
「……たらし?」
聞き返すと、
「…女たらしだと……なので、お気をつけを」
冗談ともつかない微笑みに、
「…華さん、何を言って…」
会長の顔がにわかに赤くなる。
「…はぁ」
と、応えて、
だけど、蓮見会長って奥さんがいるはずだろうに、何を言ってるのかなと思う。
ああ…でも、大企業の会長ともなると、愛人の一人や二人当たり前だとか……?
それで、そんな話をされてるんだとしたら、本気で気をつけないと……とも感じた。