ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「…じゃあ、車に行こうか? 車は、向こうにあるんだ…」
華さんからカバンを受け取って、先に歩き出して行く。
その背中に、「いってらっしゃいませ」と、声がかけられて、
(……奥様は、出て来られないのかな?)
ちょっと不思議にも思う。
でも、まぁいろんな事情もあるのかもしれないし……と、微かな疑問を抱きつつ付いて行く。
車庫へ着いて、
「その車だ」
と、示されたその車体の大きさに驚く。
「…これ、なんていう車ですか…?」
唖然としたままで尋ねる。
「ベントレーだ。イギリスのメーカーでな…私は、この車が好きなんだよ」
「……ベントレー?」
聞いたこともない車種だと思う。
それにしても、大きいんだけど……なんかもう、スケールまでデカいっていうか……。
唖然ついでに呆然として、車の横に突っ立ってもいると、
「……そろそろ運転をお願いしてもいいか? あまり会社へ行くのが遅くなってもまずいんで」
キーを手渡されて、
「…あ、ああ、すいません…」
と、運転席に乗り込んだーー。