ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
ーー助手席に、蓮見会長が乗ってきて、
「…え? 後ろに乗られるんじゃないんですか?」
と、その顔を見やる。
「ああ、後部座席から口ばかり出すようなことは、なんだかいけすかない気がして、あんまり好きじゃないんだ」
そう言って、
「……隣に座られるのは、嫌か?」
と、訊いてきた。
じっと見つめられて、
「…い、いえ……」
顔が赤くなりそうにもなって、下を向いて首を振る。
エンジンをかけて、車を発進させると、
「ずいぶんとスマートな運転なんだな。君は、車にはけっこう乗り慣れているのか?」
尋ねられて、
「ええ…地元では割と車は乗っていた方なんで」
答えると、
「…地元?」
と、聞き返されて、
「……長野です。向こうでは、よく走ったりもしていて」
ナビをチェックしながら喋る。
「…長野か、そこで車をだいぶ乗り込んだのか?」
「……山道を仲間と走ってたぐらいで、そんなたいしたことは……」
つい口を滑らせて、「…ハハ」と、小さく笑ってごまかすのに、
「…山道を、仲間と?」
と、突っ込まれた。