ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「……えーと、よく山道を流したりとか……昔ですが……」
なるべく無難に応えるのに、
「そうなのか…?」
と、単純に驚いた顔をされる。
「……昔の話なんで、今はもうそんなことは……」
言うと、
「…すごいな」
と、驚きを隠さないままで呟かれた。
「今度、その山に連れて行ってもらえないか?」
なんだか興味ありげにも話されて、
「…え? あ…いや、もうあの頃みたいには走れないんで…ホントに…」
返すと、
「…そうなのか? なんだ…君の走りを体験してみたかったんだがな…」
残念そうにも言われて、
(蓮見会長みたいな方が、なんで私の走りに興味とか……。
それに、断っただけでそんな寂しそうにもされたら、なんだか私が悪いみたいっていうか……)
「……だったら、いつか機会があれば……」
そう取り繕うと、
「本当にか? 楽しみにしてるよ…」
急に嬉しそうな顔にもなって、
(……その表情、こっちが照れますし、反則ですから……)
と、目をそらした……。