ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
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ーーやがて、会社に着いて、
「これは、セキュリティカードだ。これで会社の中にも自由に出入りできるから、私が帰る時間までは好きにしていてもらってかまわない」
と、カードを首にかけられた。
「…はい。いってらっしゃい」
言うと、
「ああ…ありがとう。行ってくるよ…」
と、会長は微笑んで、軽く手を振った。
その気品すら漂う背中に、ただ見とれる。
頭を下げる数人の部下らを付き従えて中へ入って行く姿を、まさにほれぼれとしつつ見送って、
これから、どうしようかな……と、考える。
「…ちょっと会社の中に入ってみようかな…。こんな大きな会社を見れるなんて、そうないだろうし……」
興味本位でエントランスを抜けると、自分にはまるで縁のなかった大企業の放つ威圧感に、圧倒されそうにもなる。
「…凄いな、ホント…」
様々な部署に分かれた階数表示を見上げながら、呟く。
……確か、蓮見会長はこの会社を一代で築いたんだっけ……。
凄すぎる……雲の上の人って感じだよね、本当に……。
改めて、会長の風格を見せつけられたようにも感じて、ため息が漏れた……。