ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
フロアをチェックしていたら、ビュッフェとあって、
「…ビュッフェって、何があるんだろう……」
表示されてたビルの2階に行ってみると、フロア全体が食事スペースになっていて……もしかして、これが社員食堂なの? 嘘でしょ……と、思う。
入り口でセキュリティカードを提示すると、
「こちらは、全てが無料になっていますので、どうぞお好きなものをお召し上がりください」
と、中へ招き入れられた。
ーー食べ物は、ご飯類や副菜だけじゃなく、サラダにフルーツや飲み物までもが揃っていて、その品揃えの多さに信じられなくなる。
「…これが、全部無料だなんて……」
プレートにいろいろと盛り合わせて、席に着く。
窓から外を眺めると、何人ものビジネスマンらがビルを出入りしていて、この会社の活気を直に感じる。
「…蓮見会長か……こんな会社のトップだなんて、なんだかもう完璧すぎるっていうか……」
呟いて、
「……だけど、さっきは走りを拒んだだけで、寂しそうにもしてきて……」
プチトマトをフォークで刺して口に入れる。
「……あんなにも完璧なのに、たまに見せる隙みたいなのが、なんとも言えないっていうか……」
そんな風にも思って、
「でも、本気で隙ができるようなことってあるのかな? あの完璧な紳士が……」
いや、やっぱりないか……そう思い直すと、クスリと笑いが漏れた。