ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「じゃあ、行こうか?」
エレベーターから降りてきた会長の後ろを付いて行く。
皺ひとつない濃紺のスーツを着こなした蓮見会長は、後ろ姿だけでも決まっていて、
(……"ダンディ"なんて言葉は、この人のためにあるんじゃないか……)
とまで、思えてくる。
本当に、本物の紳士って感じで……スーツの袖口から見え隠れする腕時計すら、トータルにそつのないコーディネートで、
あのパールの腕時計もスーツに合わせて付けてるのかなと、目を奪われてもいたら、
「…ところで、今まで何をしていたんだい?」
不意に振り向かれて、本気で心臓が飛び出そうなくらいにびっくりする。
「…え、あ…イラストを……」
しどろもどろになりつつ答えると、
「……イラストを?」
と、聞き返された。