ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
第2章 紳士に惑わされて
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ーー次の日、家を訪ねると、やっぱり出てきたのは、蓮見会長と華さんだけで、
「あの…奥様は見えられないんですか?」
と、訊いてみる。
2日も続けて見送りに現れないことが、単純に不思議にも感じて訊いたことだったのに、
「……え」
と、困ったような顔を2人同時にされて、
「あ…ごめんなさい! 立ち入ったことをお聞きしたりして…」
とっさに頭を下げた。
「ああ…悪い。謝らなくていいよ……まだ、言ってなかったかな? 妻は、もういないんだ……」
会長の言葉に、(…いない?)と、さらに疑問がわいて、だけど突っ込んで尋ねていいのかをためらってもいると、
「奥様は、だいぶ前に亡くなられたんですよ」
と、華さんが口をひらいた。
「……えっ」と、言葉に詰まる。
「……もう10年にもなりますよね…」
「…そうだな」
会話を聞きながら、
(そんなに以前に奥様を亡くされていて……?)
「……だって、昨日は結婚してもう17年って……」
つい漏れた呟きに、
「…ああ、生きていたらなってことを、言い忘れたな…」
会長が少し悲しそうにも目を伏せた。