ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」
「マネキンなんかより、効果絶大ってところですね」
「ええ、本当に」
応えるスタッフさんの視線の先には、にこやかに談笑をする蓮見会長がいて、
居るだけで周りを引き寄せるだなんて、魅力的なのにも程があるんじゃないかとーー。
でも、ホントどこまでもいい男なんだよね……締めたペールグレーのネクタイだって、あんなにスーツに嵌って、
信じらんないくらいの、まさにパーフェクトな紳士っぷり……。
「……鈴森さん?」
ぼんやりと考えていたら、目の前に当の紳士が立っていた。
「…うわっ…」
慄いて後ずさると、
「…何を、そんなにびっくりして? 」
と、肩に軽く手をかけられて、
「そろそろ次の店舗に行こうか?」
そのまま、肩を抱くようにもして歩き出されて、ドキドキがおさまらなくなって、
「…か、会長…肩の手を……」
口にすると、
「…ああ、すまない。君が何かビクついてるようだったから、軽いスキンシップのつもりで…悪かったな」
と、手を離した。
「…悪いだなんて、そんな…」
こんな人に肩なんか抱かれたら、心拍数が上がりまくりだからと……、
そういうさりげない優しさは、好きな人にでも見せてくださいと、自分は会長の運転手なだけなのが、ふと虚しくもなるみたいだった……。